2013年02月03日

下請け実態ゆがめて報告 仙台市発注解体工事

 仙台市が発注した東日本大震災の損壊建物の解体工事で多重下請けが横行した問題で、市が下請けの流れを把握するため、元請け業者に提出させている施工体系図の一部が実態と異なっていることが1日、複数の業者らへの取材で分かった。市は工事の実態を調査する方針だが、解明は困難とみられる。

 市は工事ごとに元請け業者に施工体系図を作らせ、提出させている。体系図には暴力団を工事に関与させない誓約や下請けの業者名、実際に施工した作業員の名前などが記載されている。
 解体工事では業者やペーパー会社、暴力団関係業者など多くて7、8社が下請けに連なる多重下請けが相次ぎ、施工業者が採算割れや利益ゼロで請け負ったことが判明している。だが、体系図では最多でも3社が下請けに入る「3次下請け」の工事になっているという。
 発注者の市震災廃棄物対策室の担当者は、これらの体系図を根拠に「多重下請けはなく、暴力団を関係させない誓約も取っている」と強調。一方、「仮にペーパー会社やブローカーなどが介在しても下請けとして計算せず、体系図に記載はない」と説明している。
 ある業者は「ペーパー会社やブローカーは施工能力がないのに下請け業者の間に入り、10%前後の金を抜く。業界では下請けの一つとして計算するのが常識だ」と話す。
 別の業者は「多重下請けになった場合、元請けが正直に体系図を作るわけがない。実態と懸け離れた体系図は発注者の市にとって見たくない現実を隠す格好の文書だ」と市の言い分を批判する。
 解体工事は早期の復興事業として緊急性が求められたため、下請け業者間は口約束で請負額が決まり、契約文書のないケースが多い。一定額が抜かれた工事費は上位の下請け業者やブローカーから下位の下請け業者の口座に振り込まれた。ブローカーやペーパー会社などが介在した場合、約束通りの金額が振り込まれないトラブルもある。
 業界関係者は「多重下請けで中間利益を得たブローカーや暴力団関係業者は、解体工事の事業が終盤を迎えた今では手を引き、連絡が取れない。実態解明なんて無理な話だ」と指摘する。


<上位下請けへ名簿提出>

 仙台市が解体工事の元請け業者に作らせた施工体系図をめぐり、多くの業者は「施工業者の偽装など、うその記載がある」と証言する。
 5次前後の下請けとなった解体工事を実際に施工した業者は、上位下請け業者から作業員名簿の提出を求められ、差し出した。施工体系図には作業員の名前や業者名を記すことになっており、その欄が体系図の「施工業者」になる。
 この施工業者は「上位下請け業者は『うちが施工したように見せないといけないので、名簿が必要だ』と話していた」と明かす。
 別の施工業者には昨年の工事後、元請け業者から連絡があり、作業員名簿を上位の下請け業者に渡すよう指示された。
 数日後に訪ねてきた2次下請け業者は「元請けから、下請けは2次か3次止まりにするよう注意されている」と言ったという。
 ある施工業者はこう打ち明ける。
 「3次以上の下請けになれば、施工業者の採算割れが疑われる。元請けや上位下請けは現場を搾取して復興特需を独り占めし、その証拠まで消そうとしていた」

[仙台市発注の解体工事] 国庫補助事業で市民や中小企業が所有する建物の解体費を負担する。全壊や大規模半壊などが対象。昨年9月末までの期限内に申請が約1万1000件があった。1月末見込みで約1万件の解体工事が終わり、約210億円が支出される。元請け受注は、仙台建設業協会の会員業者と宮城県解体工事業協同組合の2ルートに分かれ、業者選定は協会や組合に任せられる。



Posted by ビッグバン at 08:50│Comments(0)
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